映画を愛するすべての人へ届け 森田惠子監督インタビュー

※森田惠子監督は、2021年、4月22日にご逝去されました。投稿は2019年12月のものです。
映画を語る事が好きである。
人生のなかで、出会ったいくつものたいせつな映画。
その映画のことを考えると、未だに当時のワクワクした気持ちが蘇ってきたりする。
見た映画の内容も覚えているが、どこの劇場で見たか。だれと見たか。そんな事も覚えていたりする。
観客としてたくさんの映画を見てきた。
俳優だけでなく、やがて映画監督という存在にも興味を持つ。映画を作るときの舵取りを行うリーダー的な存在だと知り、監督の名前も覚えるようになってきた。シドニー・ルメット、ピーター・ウィアー、アラン・パーカー、フランシス・F・コッポラ、カーティス・ハンソン。数え上げたらキリがないが、このような名前を監督クレジットで見つけたら、必ず劇場へ行こうと思った。シネコンであれ単館系のミニシアター映画であれワクワクしながら行ったものだ。
映画を観る喜び。すばらしい映画を観たときは、僕たち観客は、映画を作った作り手たちに拍手を送る。
しかし、僕たちはもうひとつ、大事な役割を担っている人たちに対し、拍手を送るべきだ。
映画を観客のもとへ届ける、言わば『届け手』のような存在の人たち。
それは映写技師であり、映画館主であり、劇場のスタッフであり、自主上映会の実行委員であったりする。
映画と観客のあいだには、必ずその作品を届けようとする人たちがいる。
そんな、裏方の人たちの世界、ちょっとのぞいてみたい。
というわけで、長くなってしまったが、
先日、東京都多摩市の聖蹟桜ヶ丘駅近くのキノコヤという今年(2019)オープンしたカフェバーで、
ドキュメンタリー監督の森田惠子さんの『まわる映写機 めぐる人生』の上映会を行なった。
『まわる映写機 めぐる人生』は、
森田さんのライフワークのひとつである映画にまつわる3部作の完結編となるような作品だ。
取材の対象者は映写技師であったり、映画館主、自主的に上映会を行う上映スタッフの方達などなど、いわゆる裏方的な存在で映画を支える人たちだ。
そんな日頃はスポットライトが当たらないような存在の方々を、森田監督は持ち前の度胸と愛嬌でグングンと撮影していく。
取材対象者から新たな人を紹介してもらい、どんどんと人脈を広げていく撮影手法は、
芋づる式であり、行き当たりばったりな感じは「NHK 鶴瓶の 『家族に乾杯』」式とも言えるだろう。
理詰めで考えずに、常に柔軟性を持ってインタビューするので、
取材対象者は、やがて、楽しそうにカメラに向かって語り出す。
そんな森田監督に、キノコヤでの上映前にインタビューをさせて頂いた。
映画に対する想いはもちろんだが、人との出会いに感謝して生きている森田さんの笑顔を見ていると、
なんとなくこちらも童心に戻ったような錯覚に陥る。
今回の映画『まわる映写機 めぐる人生』は、
森田さんの映画にまつわる3部作の堂々の完結編である。
映画にまつわる3部作
1作目『小さな町の小さな映画館』
2作目『旅する映写機』
3作目『まわる映写機 めぐる人生』
1作目の『小さな町のちいさな映画館』は既に販売DVDは完売してしまったが、2作目『旅する映写機』3作目『まわる映写機 めぐる人生』はDVD&パンフは発売中である。
DVDの購入もありがたいが、
森田さん自身が来場してくれる可能性のある、自主上映会も検討してほしい。
映画を広く、楽しく知るためのネクストステップとして、
ときどき見直してもらいたい。そんな味わいのある3部作だ。
この3部作では多くの映画館へ出向き、インタビューを行なっていた。
(• 大黒座 • 善映館 • 萬代館 • みやこシネマリーン • 本宮映画劇場 • 川越スカラ座 • 国立ハンセン病資料館 • 三日月座 • シアターN渋谷 • シネマ・クレール • シネマ尾道 • シネマルナティック • 旭館 • 大心劇場 • 土佐山田東映)
そして、いくつかの映画館はこの作品の完成のあと、ほんとうに残念な事だけど閉館してしまっている。
ときどき、「こんな映画館が日本にあったんだ」とか、「こんな人たちが映画を届けるため動いていたんだ」とか、
そういう事を思い出し、ちょっとだけ労ってほしいという気持ちである。