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Yuto Sakaki / Moviemaker

前田高田コンビの10年間

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榊 祐人。 映像キャメラマンや、映像演出などの仕事をしている。 大学の頃から映画の脚本を習いはじめたのがきっかけで、 今も映画を観るのも作るのも好き。コンスタントに映画を制作する事が目標。

 

  『婚前特急』  主演 吉高由里子

物語の要約メモ ★ネタバレ有り

京王線のホームに女と男の後ろ姿。

男、電車に乗ろうとする女の腕を掴み、無理やりキスをする。女の方も悪い気がしないのか、キスに応じる。電車、そのまま発進してしまう。女は電車を逃す。

先ほどの電車を逃した女・主人公のチエ(吉高由里子)は友人のトシコ(杏)と街でブラブラ。

チエは嬉しそうに、無理チューされた事について、トシコに話す。

チエは若い彼氏、野村(吉村卓也)以外にも、複数の彼氏を持っているようだ。チエの言葉から察するに、

1人の相手だけを愛するよりも、複数の相手と都合が良い時に会う方が、チエにとっては良いらしい。

そんなチエの理屈を聞きながらも、トシコも、妊娠したという話をはじめる。

トシコの彼は、避妊などを気をつける男であるが、トシコは隠れてコンドームに穴を開けたらしい。だから妊娠。

チエ、そんな怖い事をするトシコに少し引いているような感じ。

別の日。美容室で年上の彼氏・三宅(榎木孝明)とスペイン旅行の話をするチエ。

この美容室は三宅が経営している店だ。三宅は妻との離婚を考えているとの事。離婚するまでは旅行などにいけない事を謝る。(でもなんとなく三宅の話は嘘っぽい)

チエの方は別に離婚など求めていない。チエは旅行に行きたいだけ。

チエ、そのまま原付で次の場所へ。バイク店を営んでいるロン毛の男・出口道雄(青木崇高)と会った後、

チエは自宅へ。

むしゃくしゃした時に利用しているであろう、ペッタン人形をおもいっきり壁に投げつける。

そしてバッグの中から鍵を取り出す。鍵を確認すると合鍵が5つ(男は5人)。

インターホンが鳴る。チエ、ドアを開けると男。小柄で小太りな男・田無タクミ(浜野謙太)。

「お風呂借してぇ〜」と図々しい感じで勝手に中へ。別の男と会いたいチエは、さっさと田無を家から追い出す。

田無は4人目の男。いちばん、ぞんざいに扱われている。

チエは5人目の男の元へ。最後の男は、西尾みのる(加瀬亮)。みのるの部屋で、チエはみのるのために手料理を作る。話す内容と言えば、年上なんだけど最近入ってきた後輩社員(堀アキラ・宇野祥平)についての愚痴。

みのるの部屋のデスクには、みのると息子らしき少年との写真が飾られている。どうやら、離婚しているみたいだ。(チエがその写真を気づいている…という描写はない)

ここで5人全員の登場は終わる。

 

トシコの結婚式。

しあわせそうなトシコ。ブーケトスを投げると、ブーケはチエに向けて投げられる。

キャッチしたチエ。何故か、頬から涙。

結婚式が終わったあと(その日の夜?)。チエとトシコは電話で話す。

チエ「いやぁ、何でか分かんないけど涙が出たよ」

と感動した事を素直に話すチエ。

トシコ「結婚もいいもんだよ」

半信半疑なチエ。しかしながら、少しだけ結婚に対して、1人の男を愛する事に対して

興味を持っている様子。

そんなチエにに対して、トシコからの提案が。

その提案は、チエの中で有り得ない! と思っている人から順番に削っていって、

最後に残った人と結婚するのはどうか…という事。

 

チエは、5人の男のメリットとデメリットを日記に書き連ねていく。

そんななか、デメリットはたくさんあるが、メリットが 「楽」という一文字だけだった田無タクミから関係を切る事をあっさりと決断するチエ。

 

別の日。

田無タクミに別れを告げようと、田無が働くパン工場へ。

チエ「私と別れてくれない?」とお願いするチエ。

ショックを受けると思っていたが、田無のリアクションはチエにとって想像外のもの。

田無「なんで? だって俺たち元々付き合ってないじゃん」

チエ「えっ?」

田無「これからも体だけの関係は続けようよ。じゃーね」そう言って仕事に戻っていく田無。

チエ…言葉がない。なんとなく負けた感。そしてチエが振られたみたいになっている。

 

自宅に戻ったチエ。

それからチエは復讐を決めた事を、電話でトシコに告げる。

「絶対、仕返ししてやる。おもいっきり私に惚れさせて、それから捨てるってのはどう? どうせ休み取っちゃったし」

有給を取ったチエ。それからチエは、パン工場のすぐ隣にある喫茶店で、田無タクミの張り込みをはじめる。

工場の前で田無は、他の工員とともに、出来立てのパンを販売している。

たくさんのお客さん。おっさんやわるガキ。その中に、美しい女性・ミカ(石橋杏奈)がやってくる。ミカの前だと、なんだか照れている田無。自分と向き合っている時とは、違う表情をしている。その変化をチエは見逃さなかった。

 

チエは、缶をつぶす遊びをしている小学校高学年くらいの悪ガキ少年3人(先ほどパンを買いに来ていた)に聞き込み調査。

どうやら、先ほどのミカという女はパン屋の社長の娘。

悪ガキ1「あのお姉ちゃん、ヤリマンらしいよ」

悪ガキ2「ヤリマン! (悪ガキ3に向かって)お前、ヤリマンしらねーだろ」

悪ガキ3「(強がって)知ってるよぉ。そんなのぉ」

…そんなまったく信憑性のない会話を聞くチエ。 

 

別の日。

チエの家にやってきた田無タクミに、チエは意地悪くミカの事について尋ねだす。

チエ「あんたあの女の事、好きなの? あんたね、あの女誰とでも寝る女だよ。みんなそう言ってたよ」

悪ガキたちに聞いただけの信ぴょう性の無い情報を、自信たっぷりに言って田無を虐めようとする。

 

しかし、田無はキョトンとしている。そして言う。

田無「百歩譲って、いや億歩譲って、ミカちゃんがヤリマンだとしても、それが何だって言うのよ。人の中身は変わらないのよ。あの子はとても綺麗な子なんだよ」そんな田無の大人な発言に更にイライラが募るチエ。

行動に出る。

チエはわざと田無とミカがいるパン工場に現れる。

ミカが勤めているケーキ屋さんにも訪れる。

ケーキ屋さんで年上の知り合いに、

自分なりの意見をズケズケと言う物怖じしない雰囲気のミカがそこにいた。

娘へのプレゼントのために、買い物に付き合ってほしい。そんな常連客のお願いをOKするミカ。誰に対してもフレンドリーなミカは、チエとは対照的に見える。

 

別の日。

田無タクミはミカを散歩に誘う。ポケットから田無はアフリカの楽器・カリンバを取り出す。

そして、演奏する。聴き入るミカ。なんとなくいい雰囲気。

 

チエ、田無から電話がかかってくる。

田無「チエちゃんのアドバイス通りにやったら、ミカちゃんと付き合える事になった。ありがとう!」

意味がわからないチエ。しかし、田無が幸せそうな感じが更にムカつく。

田無から食事のお誘いが来る。最初か断る気満々だったチエだが、引き受ける事に。

 

別の日。ミカの部屋。ドアを開けるとチエと西尾みのる(加瀬亮)が。

そして、ミカと田無。チエとみのるは、ミカが作った料理を食べはじめる。

幸せそうなミカと田無を見て、なんだか腹の立つチエ。

さらに、チエ以外の3人。急激に仲良くなる。百人一首の話などで盛り上がり、良い感じに。

チエにとっては更に除け者感が強まる。

チエはいきなり田無にキスをする。

そして、そのまま立ち去るチエ。微動だにしない田無。

しかし、すぐに追いかける田無。田無は部屋を出て行く。

残されたミカとたくみ。

ミカ「どういうこと…?」

みのる「人知れずこそ 思ひそめしか  だよ」

 

そして。原付バイクで逃げるチエ。

チャリンコで追いかける田無。

言い合う2人はそのまま、ブレーキを踏むのが遅れて、茂みの中へ。

泥だらけになりながらも、喧嘩し続ける2人の前に警察官がやってくる。

警察官「この辺りに、女が男に暴力を振るっている通報があったんだけど…(チエに)お前か」と。

警察官は問答無用でチエ。そして田無を連行する。

 

そして。牢屋でも喧嘩を続ける2人。ここでようやく、チエが田無に傷つけられた事。それをチエはずっと根に持っている事。チエは復讐をしようとしていた事。チエに彼氏が5人いる事などを、田無は知る事となる。

そして。チエはトシコに。田無はミカが保証人となり釈放される。

 

トシコの家。ソファで寝ていたチエ。朝、起きるとトシコとその旦那が楽しそうに朝ごはんの準備をしている。

その姿を見ていたチエ。なんだか羨ましく感じる。

チエ「結婚って良いね」

と思わずこぼれる。

 

道。ミカと田無が歩いている。

ミカ、指輪を田無に返し、思いっきりビンタする。

 

チエは、なぜか田無の家へ行く。部屋には誰もいない。

本棚には「〇〇になるには」というシリーズの本がずらりと。

チエ「お前、なりたいもん多すぎだろ…」

 

外から人が入る音。田無だ。

チエは隠れようと押入れを開けるが、隠れるスペースが無い。

なぜかチエはそのまま床に倒れる。

 

部屋に入って来る田無。

ビックリはしているが寝ているチエに向かって、語りかける。

田無「俺、ふられちゃった…。やっぱり俺にはチエちゃんしかいない」

そんな事を言われても困るチエは起き上がり、2人は喧嘩をはじめる。

 

そして。チエを壁に押したら壁が壊れた。

壁が破れ、隣に住んでいるおばあちゃんと目が合うチエと田無。

おばあちゃん、何故か2人に向けてアドバイスを。

おばあちゃん「若いうちにいっぱい喧嘩しなさい」

 

田無の部屋に戻った2人の会話

チエ「あんたなんか、万が一でもないからね」

田無「それでも良い。俺、がんばるよ」

チエ「(心が揺れている)そう…がんばって」

田無「がんばる!」

そして田無は強引にチエにキスをする。無理やり押し倒す。痛がるチエ。

チエ「調子乗りすぎ!」

 

別の日。

結婚式会場。花嫁姿のチエの横には田無タクミ。

大勢の人たちが祝福に参集している。

その中には、かつての男たち。そしてミカもいる。

チエ、ブーケを投げる。キャッチするミカ。隣で微笑む、西尾みのると見つめあって、笑う。新しい恋はもう動いているのか。

そして、チエと田無は、目の前にある電車に乗り込み、車内でキスをする。

そして、電車は無事、出発していった。

 

 

 

 

『婚前特急』映画の感想

一言で言うと面白い。

俳優と、その俳優が演じる役柄。この2つがぶつかり合い刺激し合い、まるで化学反応を起こしたような感覚。ひとつひとつのシーンが、なんというか花火があがるようにスパークしていて、エネルギッシュでスリリング。この映画の吉高由里子を見ていると、ニヤニヤしてしまう。映画を観に行くって、役者を観に行くこととほぼほぼイコールだと思う。そんな中でこの映画の吉高は、彼女の個性とキャラクターがピタリと合っているように感じる。

 

演出について

監督の前田弘二氏と脚本の高田亮氏は、この映画版の前に、ネットドラマ版『婚前特急-ジンセイは17から-』という1話5分ほどのドラマを4本(たぶん4本)作っている。主演はもちろん映画版と同じで吉高由里子。

ネットドラマ版の配信が2009年。映画化が2011年。

 

ネットドラマ版のチエは、映画版のチエよりも、少しだけ暗い人物のように感じられるし、映画版と比べて

少し落ち着いているようにも感じる。これはこれで面白かったが、映画版と比べると弾けっぷりは押さえられている。

ネットドラマ版での撮影経験が既にあったため、映画化の際に、すでに吉高由里子という特徴的な俳優(というか生き物)の雰囲気をガシッと掴んでおり、シナリオ段階で、

「吉高さんだったら、こう言うよね」とか

「こんな事、吉高さんがやったら面白そう」なんて会話を前田&高田でしていたのではないか。

ネットドラマでの撮影体験が、より重要な物となり、

シナリオの際にジャストフィットする俳優と役柄のケミストリーが生まれたような気がする。

『婚前特急』はシナリオのあて書きによって成功した作品になった。

 

好きなシーンがいくつかある。

まずは、まずは、何と言っても吉高由里子。彼女が演じるチエが魅力的。いや自由。モノローグを主体的に、付き合っている男の査定。メリットとデメリットを手帳に書き連ねる所の呼吸。映画が活発に動いている感じがするのだ。例えば、チエが見下していた田無タクミ(浜野謙太)に傷つけられたあと、

女友達のトシコ(杏)との電話で、田無に対する復讐を決意するシーン。チエが電話越しにどんどん怒ってくる所の芝居が面白い。

「絶対、仕返ししてやる。おもいっきり私に惚れさせて、それから捨てるってのはどう? どうせ休み取っちゃったし」と、矢継ぎ早にどんどん勝手に決めてしまうチエのキャラクターが、吉高の芝居とマッチしていて思わず笑ってしまう。この吉高由里子と杏の異なるキャラクターの、芝居のやり取りがとても良い。

駅の改札から出てきた瞬間に、トシコに対していきなり「ねぇ聞いてよ!」と愚痴を吐き出すチエ。突飛な行動に見えるが、彼女の存在感ならばあり得る…と思わせるとても好きなシーンが、この駅前での待ち合わせシーンの演出である。

 

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